日本から11時間。北極圏に降り立った瞬間、透き通るような冷たい空気が肺いっぱいに広がり、地平線まで続く溶岩台地が視界を覆う。これがアイスランドだ。真夜中でも夕焼けのように空が青白く輝く夏の白夜、冬には暗闇の空をカーテンのようになびくオーロラ。氷河と火山が共存し、間欠泉が地響きとともに噴き上がる。この「地球の別の惑星」のような場所で、あなたは自分の世界観が音を立てて書き換わる体験をすることになります。
アイスランドってどんな国?
アイスランドは北大西洋に浮かぶ、日本の四国と九州を合わせたくらいの面積を持つ島国です。人口はわずか38万人ほど。その数字だけ見ると「小さな国」と思うかもしれませんが、この国が旅人に与える衝撃は、その何百倍もの大きさです。
火山活動が活発で、国土の約11%が氷河に覆われている。温泉が街中に湧き、地熱発電で電力のほとんどをまかなっている。そんな「火と氷の国」というキャッチフレーズは、決して誇張ではありません。実際に訪れると、その自然のスケールと力強さに圧倒されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | アイスランド共和国(Republic of Iceland) |
| 首都 | レイキャビク(Reykjavík) |
| 言語 | アイスランド語(英語も広く通じる) |
| 通貨 | アイスランド・クローナ(ISK) |
| 時差 | −9時間(サマータイムなし) |
| ビザ | 90日以内の観光は不要 |
| 飛行時間 | 日本から約11〜13時間(経由便) |
90日以内ならビザ不要、英語が通じる、治安も世界トップクラス。これほど旅しやすい「非日常の大自然」は、なかなかありません。
アイスランド旅行の費用
正直に言います。アイスランドは「安い旅行先」ではありません。物価は日本の1.5〜2倍。ビール1杯が1,500円、レストランでのランチが3,000円以上というのが現実です。でも、それでも行く価値があるのがアイスランド。予算をしっかり組めば、決して手の届かない場所ではありません。
航空券の費用目安
| シーズン | 往復価格(エコノミー) | 備考 |
|---|---|---|
| オフシーズン(11〜3月) | 8万〜12万円 | オーロラシーズンでも比較的安い |
| ハイシーズン(6〜8月) | 15万〜25万円 | 白夜シーズン、最も混雑 |
| 肩シーズン(4〜5月、9〜10月) | 10万〜18万円 | 狙い目の時期 |
日本からの直行便はないため、ヨーロッパや北米経由になります。フィンエアー(ヘルシンキ経由)、スカンジナビア航空(コペンハーゲン経由)、アイスランド航空(ロンドン経由)などが主な選択肢。早期予約なら往復10万円台も十分狙えます。
宿泊費の目安
| タイプ | 1泊あたり | 特徴 |
|---|---|---|
| ゲストハウス(ドミトリー) | 3,000〜6,000円 | 最も安価、キッチン利用可能な場所も |
| ゲストハウス(個室) | 8,000〜15,000円 | 共用バスルームが多い |
| ビジネスホテル | 15,000〜25,000円 | プライベート重視ならこのクラス |
| 中級ホテル | 25,000〜40,000円 | 朝食・温泉付きも |
| 高級ホテル | 50,000円〜 | 絶景ロケーション、スパ完備 |
宿泊費を抑えるコツ
キッチン付きの宿に泊まって自炊すれば、食費を大幅に節約できます。アイスランドのスーパーは品揃え豊富で、新鮮なサーモンや野菜も手頃な価格で買えます。レストランで1食3,000円使うなら、スーパーで食材を買って宿で料理すれば同じ金額で3食分まかなえます。
食事の費用目安
| 食事タイプ | 価格 |
|---|---|
| スーパーで自炊(1食) | 500〜1,000円 |
| ホットドッグスタンド | 600〜800円 |
| カフェ・軽食 | 1,500〜2,500円 |
| カジュアルレストラン | 3,000〜5,000円 |
| 本格レストラン | 8,000〜15,000円 |
| ビール(1杯) | 1,200〜1,800円 |
交通費・ツアー費用
| 項目 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|
| レンタカー(1日) | 8,000〜15,000円 | 小型車、保険込み |
| ガソリン代(1日) | 2,000〜4,000円 | 走行距離による |
| レイキャビク空港バス(片道) | 2,500〜3,500円 | 市内ホテルまで |
| ゴールデンサークルツアー | 8,000〜12,000円 | 日帰りバスツアー |
| 氷河ハイキングツアー | 15,000〜25,000円 | 装備レンタル込み |
| オーロラツアー | 8,000〜15,000円 | 冬季限定 |
| ホエールウォッチング | 10,000〜15,000円 | 3〜4時間 |
旅行スタイル別の総費用目安
5泊7日の旅程を想定した場合の総費用をシミュレーションしてみました。
節約旅行
20〜30万円
経由便 + ドミトリー + 自炊メイン + バスツアー利用
- 航空券: 8〜12万円
- 宿泊: 3万円(ドミトリー)
- 食事: 3〜4万円(自炊+時々外食)
- 交通・ツアー: 4〜6万円
スタンダード
35〜50万円
経由便 + ゲストハウス個室 + レンタカー + 外食中心
- 航空券: 12〜18万円
- 宿泊: 6〜8万円(個室)
- 食事: 6〜8万円(外食中心)
- 交通・ツアー: 8〜12万円(レンタカー含む)
リッチ旅行
60〜100万円
快適な経由便 + 高級ホテル + レンタカー + グルメ堪能
- 航空券: 20〜30万円(ビジネスクラス可)
- 宿泊: 20〜30万円(高級ホテル)
- 食事: 10〜15万円(レストラン重視)
- 交通・ツアー: 10〜20万円(プライベートツアー含む)
アイスランドは高い。でも、その価格に見合う価値があるからこそ、世界中から旅人が集まるのです。レンタカーで自由に動ける喜び、地平線まで続く氷河の絶景、夜空を覆い尽くすオーロラ。これらの体験は、お金には代えられません。
絶対に外せない観光スポット
アイスランドの国土は想像以上に広大です。レイキャビクを拠点にするなら、まずは定番の「ゴールデンサークル」から。そして時間があるなら南海岸、北部、西部へと足を伸ばしましょう。どこを切り取っても、そこには「地球の鼓動」が聞こえる景色が待っています。
ゴールデンサークル — アイスランドのハイライト
レイキャビクから日帰りで回れる、アイスランド観光の王道ルート。シンクヴェトリル国立公園、ゲイシールの間欠泉、グトルフォスの滝の3つをつなぐ周遊ルートです。レンタカーなら半日、バスツアーなら8時間ほど。アイスランドに来たら、まずここを押さえないと話になりません。
シンクヴェトリル国立公園は、ユーラシアプレートと北米プレートが裂けていく大地の割れ目を、その目で見られる場所。黒い岩の裂け目を歩くと、まるで地球の内側を覗き込んでいるような錯覚に陥ります。この亀裂は毎年2センチずつ広がっている。つまり、あなたが今見ている景色は、来年にはもう少し変わっているということ。地球が生きていることを、これほど実感できる場所はありません。
ゲイシールの間欠泉では、ストロックル間欠泉が5〜10分おきに約20メートルの高さまで熱水を噴き上げます。地面から「ゴゴゴゴ…」と低い音が響き、次の瞬間、ドーンという音とともに青白い水柱が空へ。その迫力に、思わず歓声が上がります。冬には噴き上げた水が空中で凍りつき、キラキラと光の粒となって降ってくる。自然の力のすごさを、全身で感じる瞬間です。
そしてグトルフォスの滝。轟音を立てて流れ落ちる二段の滝は、アイスランド最大級の水量を誇ります。滝壺から立ち上る水煙が虹を作り、晴れた日にはダブルレインボーが現れることも。冬には滝の周囲が凍りつき、青白い氷の彫刻のようになります。この滝を見ずして、アイスランドを語るなかれ。
ヨークルスアゥルロゥン氷河湖 — 地球の宝石箱
レイキャビクから車で5時間。南東部にあるこの氷河湖は、アイスランドで最も美しい場所のひとつです。ヨーロッパ最大の氷河・ヴァトナヨークトル氷河から流れ出た氷山が、静かな湖に浮かぶ光景は、まさに絶景。
湖に浮かぶ氷山は、ただの白い氷ではありません。何千年もかけて圧縮された氷は、透き通るような青色に輝いています。その青は「アイスランドブルー」と呼ばれ、世界中のどこにもない色。太陽の角度によって、氷山は白、青、エメラルドグリーンと色を変えていきます。
湖の対岸には「ダイヤモンドビーチ」と呼ばれる黒砂のビーチがあります。ここでは、氷河湖から海に流れ出た氷の塊が、黒い砂浜に打ち上げられています。黒と青のコントラスト、太陽を透かして輝く氷の塊。まるでダイヤモンドが散らばっているように見えることから、この名がつきました。ここでしか見られない、地球の奇跡のような景色です。
ボートツアーに参加しよう
氷河湖ではアンフィビアンボート(水陸両用車)やゾディアックボート(小型ゴムボート)で氷山の間を巡るツアーが人気。氷山に手を伸ばして触れることもできます。氷河から削り取られた氷のかけらを口に含むと、何千年も前の空気が閉じ込められた氷が、舌の上でゆっくり溶けていきます。費用は6,000〜10,000円ほど。
レイニスファラのブラックサンドビーチ — 異世界の黒い海岸
南海岸にあるこのビーチは、世界で最も美しいビーチのひとつに数えられています。でも、そこに広がるのは白い砂浜ではなく、漆黒の砂。火山活動によって形成された黒い玄武岩の砂が、どこまでも続いています。
海岸には六角形の玄武岩の柱が連なる「レイニスドランガル」という奇岩群がそびえ立ち、まるで巨人が作った石の要塞のよう。伝説では、トロール(北欧の怪物)が夜明けの光で石に変わったものだと言われています。荒々しい波が黒い砂浜に打ち寄せる音、切り立った崖、そして空を舞う海鳥たち。この場所に立つと、自分が地球の端にいるような感覚になります。
警告:スニーカーウェーブに注意
レイニスファラは美しいですが、非常に危険でもあります。突然、予想外に大きな波(スニーカーウェーブ)が襲ってくることがあり、実際に死亡事故も発生しています。海岸線から離れ、決して波に背を向けないこと。特に冬季は波が荒く、近づかないのが賢明です。
ヴァトナヨークトル氷河 — 氷の世界を歩く
ヨーロッパ最大の氷河、ヴァトナヨークトル。その面積は8,100平方キロメートルで、東京都の約4倍。この広大な氷の世界を実際に歩けるのが、氷河ハイキングツアーです。
ガイドに連れられ、アイゼン(靴底の金属スパイク)とピッケルを装備して氷河の上へ。一面が白と青の世界。氷河の表面には無数のクレバス(亀裂)が走り、深さ数十メートルの氷の裂け目が口を開けています。その亀裂の奥は、息をのむような青。「グレーシャーブルー」と呼ばれる、氷河でしか見られない深い青です。
足元からは、氷が溶ける音、氷河が動く音が聞こえます。氷河は生きている。毎日、少しずつ動き、形を変えている。そんな地球の営みを、全身で感じられる場所です。
その他の必見スポット(一覧)
セリャラントスフォスの滝
滝の裏側を歩ける、幻想的な絶景スポット
スコゥガフォスの滝
幅25m・落差60mの豪快な滝、虹が美しい
ミーヴァトン湖
北部の火山湖、地熱地帯と温泉が点在
ヴィーク(Vík)の町
南海岸の小さな町、絶景の教会がシンボル
ゴーザフォスの滝
「神々の滝」という名の優雅な滝
デティフォスの滝
ヨーロッパ最大の水量を誇る迫力の滝
アスビルギ渓谷
馬蹄形の巨大な崖に囲まれた神秘的な谷
スナイフェルスネース半島
ジュール・ヴェルヌ『地底旅行』の舞台
アイスランドのグルメ
正直に言います。アイスランドは「グルメの国」というイメージではないかもしれません。でも、それは誤解です。新鮮な魚介、ラム肉、そして独特の発酵食品。アイスランド料理は、厳しい自然環境の中で育まれた、知恵と工夫の結晶なのです。
これだけは食べたい!アイスランド名物料理
| 料理名 | どんな料理? | 価格目安 |
|---|---|---|
| ラムスープ(Kjötsúpa) | 柔らかいラム肉と根菜がたっぷり入った心温まるスープ。アイスランドのソウルフード | 1,500〜2,500円 |
| ラムのグリル | 草原で育ったアイスランドラムは臭みがなく、柔らかくジューシー。一度食べたら忘れられない | 4,000〜8,000円 |
| フィッシュ&チップス | 新鮮な白身魚のフライ。レイキャビクのIcefish店が超有名 | 2,000〜3,000円 |
| ロブスタースープ | アイスランド近海で獲れるラングスティーヌ(小型ロブスター)の濃厚なクリームスープ | 2,500〜4,000円 |
| サーモン料理 | アイスランドサーモンは脂がのっていて絶品。グリル、スモーク、刺身風など調理法も多彩 | 3,000〜6,000円 |
| ホットドッグ(Pylsur) | アイスランド人のソウルフード。ラム肉入りソーセージが特徴。ビル・クリントンも食べた有名店Bæjarins Beztu Pylsurへ | 600〜800円 |
| スキール(Skyr) | ヨーグルトとチーズの中間のような発酵乳製品。高タンパク・低脂肪で健康的 | 300〜600円 |
| クレイナー(Kleina) | ねじったドーナツのような揚げ菓子。カフェで見かけたらぜひ | 300〜500円 |
チャレンジャー向け:伝統の発酵食品
アイスランドには、長い冬を越すために発達した独特の保存食文化があります。その中には、正直言って「食べるのに勇気がいる」ものも。でも、せっかくアイスランドに来たなら、チャレンジしてみるのも一興です。
| 料理名 | 説明 | 勇気レベル |
|---|---|---|
| ハカール(Hákarl) | 発酵させたサメの肉。アンモニア臭が強烈で、世界一臭い食べ物のひとつ | ★★★★★ |
| スヴィズ(Svið) | 羊の頭部を焼いたもの。見た目のインパクト大 | ★★★★☆ |
| スラートゥル(Slátur) | 羊の血と内臓で作るソーセージ。ブラッドプディング | ★★★☆☆ |
ハカールにチャレンジするなら
レイキャビクのカフェ・ロキ(Café Loki)では、伝統料理の盛り合わせプレートが食べられます。ハカールも少量入っているので、お試しにちょうどいい。アイスランドの強いお酒「ブレンニヴィーン」と一緒に食べるのが伝統的なスタイルです。臭いですが、話のネタにはなります。
おすすめレストラン・カフェエリア
ロイガヴェーグル通り(Laugavegur)
レイキャビクのメインストリート。おしゃれなカフェやレストランが軒を連ねる
オールドハーバー(Old Harbour)
港町の雰囲気が残るエリア。シーフードレストランが多い
グランディ(Grandi)
倉庫街をリノベーションした新興グルメエリア。フードホールやクラフトビール醸造所も
スコゥラヴェルズストゥーグル通り
地元民に人気のカフェやベーカリーが点在。観光客が少なく落ち着ける
アイスランドならではの体験
アイスランドは「見る」だけでなく「体験する」国です。氷河の上を歩き、温泉に浸かり、オーロラを追いかける。ここでしかできない体験が、あなたの人生観を変えるかもしれません。
ブルーラグーン — 世界一有名な温泉
レイキャビク近郊の溶岩台地に広がる、ミルキーブルーの温泉。地熱発電所の排水を利用した人工温泉ですが、その美しさと癒し効果は本物です。
真っ黒な溶岩に囲まれた中に、乳白色に輝く青い温泉。湯温は約38度で、いつまでも入っていられる心地よさ。湯に溶け込んだシリカ(ケイ素)とミネラルが肌をすべすべにしてくれます。湯の中にはシリカ泥のマッドマスクが用意されていて、顔に塗りたくって温泉に浸かる。これがアイスランド流の美容法です。
冬には雪が降る中、湯気が立ち上る温泉に入る。夏には白夜の薄明かりの中、いつまでも続く夕焼けを眺めながら温泉に浸かる。どの季節に来ても、忘れられない体験になるはずです。
ブルーラグーンの予約は必須
ブルーラグーンは事前予約制で、当日券はほぼ買えません。公式サイトで最低でも1週間前には予約を。入場料は時間帯によって変動し、8,000〜12,000円ほど。高いと感じるかもしれませんが、タオル・シリカマッドマスク・ドリンク1杯込みです。「地元の温泉派」なら、ミーヴァトン・ネイチャー・バスやシークレットラグーンなど、より素朴で安価な温泉もおすすめ。
オーロラハンティング — 夜空を彩る光のカーテン
アイスランドに冬(9月〜4月)に来るなら、オーロラは外せません。北極圏に近いアイスランドは、オーロラ出現率が非常に高い国のひとつ。運が良ければ、レイキャビクの街中でも見られることがあります。
でも、本気で見たいなら街の明かりから離れた場所へ。オーロラツアーに参加すれば、ガイドがその日の天候やオーロラ予報を見ながら、最適な場所へ連れて行ってくれます。
暗闇の中、ふと空を見上げると、緑色の光がゆらゆらと揺れている。最初は「あれ?雲?」と思うかもしれません。でもすぐに気づきます。これがオーロラだ、と。緑の光は次第に強くなり、カーテンのように空を横切り、波打つように動き始めます。赤やピンク、紫の光が混じることも。その美しさに、言葉を失います。
オーロラは自然現象なので、必ず見られるわけではありません。でも、だからこそ見られたときの感動は格別。一生の思い出になるはずです。
ホエールウォッチング — 大海原の巨人に会う
アイスランドの海には、ザトウクジラ、ミンククジラ、シャチ、イルカなど、多様な海洋生物が生息しています。レイキャビクやフーサヴィークから出るホエールウォッチングツアーでは、90%以上の確率でクジラに遭遇できます。
船が沖に出ると、ガイドが「あそこに潮吹きが見える!」と指をさします。その方向を見ると、遥か彼方で水柱が上がっている。船が近づくと、巨大な背中が海面に現れ、そしてゆっくりと沈んでいく。最後に巨大な尾びれが海面を叩き、クジラは深海へと消えていきます。その迫力と優雅さに、心が震えます。
運が良ければ、クジラのブリーチング(ジャンプ)を見られることも。数十トンの巨体が海面から飛び出し、水しぶきを上げて着水する。その瞬間を目撃できたら、あなたは本当にラッキーです。
氷の洞窟探検 — 青く輝く氷の世界
冬季限定(11月〜3月)の特別な体験が、氷の洞窟ツアーです。ヴァトナヨークトル氷河の中にできる天然の氷の洞窟は、毎年形を変え、同じ洞窟は二度と存在しません。
洞窟の中に入ると、そこは別世界。何千年もかけて圧縮された氷が、透き通るような青い光を放っています。天井から差し込む光が氷に反射し、洞窟全体が青く輝く。その神秘的な美しさは、CGで作ったような非現実感。でもこれは本物の、地球が作り出した芸術です。
シュノーケリング — 大陸の裂け目を泳ぐ
シンクヴェトリル国立公園には、シルフラ(Silfra)という裂け目があります。ここは北米プレートとユーラシアプレートの境目で、その隙間に湧き出る氷河の雪解け水が溜まっています。
この裂け目で、シュノーケリングやダイビングができるのです。水温は2〜4度と極寒ですが、ドライスーツを着れば大丈夫。水の透明度は100メートル以上で、世界で最も透明な水のひとつ。水中から見上げると、青い空、黒い溶岩の崖、そして信じられないほどクリアな水。二つの大陸の間を泳ぐという、地球上でここでしか体験できないことです。
アイスランドの他の都市・エリア
レイキャビクだけで満足していてはもったいない。アイスランドの本当の魅力は、首都から離れた場所にこそあります。
アークレイリ(Akureyri)
北部最大の都市で、「北の首都」とも呼ばれる。ミーヴァトン湖、ゴーザフォスの滝、デティフォスの滝への拠点に。冬にはスキーも楽しめる。
レイキャビクから飛行機で45分、車で5時間
ヴィーク(Vík)
人口300人ほどの小さな村だが、レイニスファラのブラックサンドビーチへのアクセス拠点。村の高台に立つ赤い屋根の教会が絵になる。
レイキャビクから車で2.5時間
フーサヴィーク(Húsavík)
「ヨーロッパのホエールウォッチングの首都」。クジラ目撃率99%を誇る。映画『ユーロビジョン歌合戦』のロケ地としても有名。
レイキャビクから車で6時間
イーサフィヨルズル(Ísafjörður)
西部フィヨルド地方の中心都市。荒々しいフィヨルドの絶景と、人里離れた静けさを求めるなら。アイスランドで最も人が少ないエリア。
レイキャビクから飛行機で40分
ヘプン(Höfn)
東南部の小さな港町。ヨークルスアゥルロゥン氷河湖への拠点。ロブスターが名物で、「ロブスターフェスティバル」も開催される。
レイキャビクから車で5時間
エイイルススタジル(Egilsstaðir)
東部最大の町。近くにはアイスランド最大の森があり、ハイキングが楽しめる。東部フィヨルドの絶景ドライブの拠点。
レイキャビクから飛行機で1時間、車で7時間
アイスランドのベストシーズン
アイスランドは「いつ行っても楽しめる国」ですが、季節によって体験できることがまったく違います。何を見たいか、何をしたいかで、ベストシーズンは変わってきます。
春(4月〜5月)
雪が溶け始め、滝の水量が増す季節。まだ観光客が少なく、ホテル代も安め。気温は5〜10度前後で、まだ寒いが春の訪れを感じられる。
おすすめ度:★★★☆☆
肩シーズンで狙い目。天候が変わりやすいのが難点
夏(6月〜8月)
白夜のシーズン。真夜中でも薄明るく、1日中観光できる。気温は10〜15度で最も暖かい。全ての道路が開通し、奥地まで行ける。ただし観光客で混雑し、宿代が高騰。
おすすめ度:★★★★★
ハイシーズン。混雑と高額を許容できるなら最高
秋(9月〜10月)
紅葉が美しく、オーロラシーズンが始まる。気温は5〜10度。夏ほど混雑せず、冬ほど寒くない。白夜は終わるが、普通に昼と夜がある生活リズムに。
おすすめ度:★★★★☆
バランスが良い時期。オーロラも狙える
冬(11月〜3月)
オーロラのベストシーズン。氷の洞窟探検も可能。気温は0度前後だが、意外と東京の冬と変わらない。ただし日照時間が極端に短く(冬至付近は4時間)、一部の道路が閉鎖される。
おすすめ度:★★★★☆
オーロラ目的なら冬一択。防寒対策は必須
結論:初めてのアイスランドなら、6月〜8月の夏がベスト。天候が安定し、全てのエリアにアクセスでき、白夜で時間を気にせず観光できます。オーロラを見たいなら9月〜3月。特に2月〜3月は日照時間も増え、気候も安定してくるのでおすすめです。
アイスランド旅行の実用情報
通信・インターネット
アイスランドはヨーロッパでもネット環境が整っている国です。レイキャビクの多くのカフェやレストランで無料Wi-Fiが使えます。でも、ゴールデンサークルや南海岸をドライブするなら、スマホでのナビや情報検索が必須。eSIMまたは現地SIMの購入をおすすめします。
| 選択肢 | 価格 | 特徴 |
|---|---|---|
| eSIM(Airalo等) | 1,500〜3,000円(3〜7日分) | スマホで即購入・即利用可能。SIMフリー端末が必要 |
| 現地SIMカード(Síminn、Vodafone) | 2,000〜4,000円 | 空港やコンビニで購入可能。データ容量が多い |
| ポケットWi-Fi(レンタル) | 1,000〜1,500円/日 | 複数台接続可能。日本で事前レンタル |
空港から市内へのアクセス
日本からの国際線が到着するケプラヴィーク国際空港は、レイキャビク中心部から約50キロ離れています。市内への移動手段は主に3つ。
| 手段 | 価格(片道) | 所要時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| シャトルバス(Flybus/Grayline) | 3,000〜3,500円 | 約45分 | 最も一般的。主要ホテルまで送迎あり |
| タクシー | 15,000〜20,000円 | 約45分 | ドアツードア。高額だが快適 |
| レンタカー | — | 約45分 | 空港到着後すぐに観光へ。自由度高い |
レンタカーか?ツアーか?
アイスランド観光の最大の選択が、これ。レンタカーで自由に回るか、バスツアーに参加するか。
| 項目 | レンタカー | バスツアー |
|---|---|---|
| 費用 | 高め(車代+ガソリン+保険) | 比較的安い |
| 自由度 | 完全に自由 | 決められたルート |
| 運転 | 自分で運転(疲れる) | 乗っているだけ(楽) |
| 解説 | なし(自分で調べる) | ガイドの解説あり |
| 向いている人 | 運転好き、自由重視、複数人 | 一人旅、運転不安、楽したい |
おすすめの折衷案:レイキャビク滞在中はバスツアーでゴールデンサークルや南海岸へ。その後レンタカーを借りて数日間のロードトリップ。これなら効率よく、かつ自由も楽しめます。
役立つアイスランド語フレーズ
アイスランドでは英語がほぼどこでも通じます。でも、少しだけ現地語を話せると、地元の人は喜んでくれます。
| 日本語 | アイスランド語 | 読み方 |
|---|---|---|
| こんにちは | Halló | ハロー |
| ありがとう | Takk | タック |
| さようなら | Bless | ブレス |
| はい | Já | ヤー |
| いいえ | Nei | ネイ |
| すみません | Afsakið | アフサキズ |
| 乾杯 | Skál | スコール |
注意事項・マナー
自然保護は最優先
アイスランドの自然は驚くほど脆弱です。苔が育つのに数十年、一度踏まれると回復に何年もかかります。ロープや柵で区切られたエリアには絶対に入らない。決められた遊歩道だけを歩き、岩や植物を傷つけない。ゴミは必ず持ち帰る。「Leave No Trace(痕跡を残さない)」がアイスランドの鉄則です。
天候の急変に備える
アイスランドの天気は「1日に四季がある」と言われるほど変わりやすい。朝は快晴でも、昼には暴風雨、夜には雪ということも。防水・防風のジャケット、重ね着できる服装は必須です。夏でも長袖と上着を持っていきましょう。
チップは不要
アイスランドにはチップ文化がありません。レストランでもホテルでも、チップを渡す必要はなし。料金にサービス料が含まれています。無理に渡すと逆に戸惑われることも。
温泉に入る前は必ずシャワー
アイスランドでは、温泉やプールに入る前に、裸で石鹸を使ってシャワーを浴びるのが絶対のマナー。水着を着たままシャワーはNG。日本の銭湯と同じ感覚です。これを守らないと、他の客から注意されることがあります。
持ち物チェックリスト
| カテゴリ | 持ち物 | 重要度 |
|---|---|---|
| 必須 | パスポート、クレジットカード、現金少々、航空券(eチケット) | ★★★★★ |
| 服装 | 防水・防風ジャケット、重ね着できる服、厚手の靴下、歩きやすい靴 | ★★★★★ |
| 冬季追加 | ニット帽、手袋、ネックウォーマー、防寒ブーツ | ★★★★★ |
| 便利グッズ | サングラス、日焼け止め、水筒、モバイルバッテリー | ★★★★☆ |
| カメラ | カメラ、三脚(オーロラ撮影用)、予備バッテリー | ★★★☆☆ |
| 水着 | 温泉・プール用(ブルーラグーン等) | ★★★★☆ |
モデルプラン
「何日あればアイスランドを楽しめる?」という質問への答えは、「最低でも5日、できれば7日以上」。ここでは、日程別のモデルプランを紹介します。
5泊7日プラン — 初めてのアイスランド王道ルート
| 日程 | 予定 |
|---|---|
| 1日目 | 日本出発 → 経由地 → ケプラヴィーク空港着(夜) → レイキャビク泊 |
| 2日目 | ゴールデンサークル日帰りツアー(シンクヴェトリル国立公園、ゲイシール、グトルフォス)→ レイキャビク泊 |
| 3日目 | 南海岸ツアー(セリャラントスフォス、スコゥガフォス、レイニスファラ) → レイキャビク泊 |
| 4日目 | レイキャビク観光(ハットルグリムス教会、ハルパ、街歩き)、午後はブルーラグーン → レイキャビク泊 |
| 5日目 | スナイフェルスネース半島ツアーまたはホエールウォッチング → レイキャビク泊 |
| 6日目 | 午前フリー(お土産購入)→ 空港へ → 帰国便 |
| 7日目 | 経由地 → 日本着 |
7泊9日プラン — レンタカーでアイスランド一周
リングロード(国道1号線)を一周する、アイスランドの醍醐味を味わうプラン。レンタカー必須です。
| 日程 | ルート | 見どころ |
|---|---|---|
| 1日目 | 空港着 → レイキャビク | 到着、街歩き |
| 2日目 | レイキャビク → ヴィーク | ゴールデンサークル、南海岸の滝 |
| 3日目 | ヴィーク → ヘプン | ヨークルスアゥルロゥン氷河湖、ダイヤモンドビーチ |
| 4日目 | ヘプン → エイイルススタジル | 東部フィヨルド、絶景ドライブ |
| 5日目 | エイイルススタジル → ミーヴァトン | デティフォス、アスビルギ渓谷 |
| 6日目 | ミーヴァトン → アークレイリ | ミーヴァトン湖、ゴーザフォス、北の首都観光 |
| 7日目 | アークレイリ → ボルガルネス | 西部の景色を楽しみながらドライブ |
| 8日目 | ボルガルネス → レイキャビク | ブルーラグーン、レイキャビク観光 |
| 9日目 | レイキャビク → 帰国 | — |
まとめ — 地球の鼓動を感じる旅へ
日本から11時間。透き通るような冷たい空気、地平線まで続く溶岩台地、夜空を覆い尽くすオーロラ。アイスランドは、あなたの世界観を音を立てて書き換える場所です。氷河の上を歩き、間欠泉が噴き上げる音を聞き、温泉に浸かりながら雪を眺める。ここでしかできない体験が、一生の記憶になります。
物価は高い。天候は不安定。それでも、世界中から旅人がアイスランドを目指すのは、この国にしかない「地球の生命力」を感じられるからです。
氷河が削った谷、火山が作り出した溶岩台地、地球の内部から吹き出す間欠泉。アイスランドは地球が「生きている」ことを、これ以上ないほど鮮明に見せてくれます。東京のビルの谷間では決して感じられない、地球のスケールと時間の流れ。それを体感できるのが、この国です。
初めての海外旅行には少しハードルが高いかもしれません。でも、一度でも「遠くへ行きたい」と思ったことがあるなら。いつか「世界の果てを見てみたい」と夢見たことがあるなら。アイスランドは、その夢を叶えてくれる場所です。
読み終わったあなたは、もうフライトを検索しているはずです。
「行こうかな」と思った今が、いちばんいいタイミングです。

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